遺言の必要性・昨今の相続事情
遺言書と聞いて敷居の高いものと思われている方も多いのではないでしょうか?今や遺言書は一般的なものになりつつあります。では、どんな時に遺言書は必要になってくるのでしょうか?また、遺言書があったら、こんな事にはならなかったというような事例や、相続事情も解説致します。
遺産分割事件の財産額
遺言書が必要となるような財産とは、どれくらいの額なのでしょうか?平成27年度に全国の家庭裁判所で取扱った遺産分割事件の内訳数字ですが、以下のようになっています。
総事件数 8,141件 | |
1,000万以下 | 2,611件 |
5,000万円以下 | 3,565件 |
1億円以下 | 1,039件 |
5億円以下 | 594件 |
5億円超 | 34件 |
算定不能・不詳 | 298件 |
※1,000万以下と5,000万円以下で全体の75%を占めます※
件数から見ると、遺産の価額5,000万円以下で全体の76%を占めています。相続で何かトラブルや揉め事が起こってしまうのは、何も億単位の資産だけではないのです。相続で揉めて(裁判沙汰)しまうことは、もはや一部の富裕層だけではなく、資産の価額に関係なく起きても不思議ではないのです。
遺言書必要度チェックリスト
実際に、遺言書を活用してもめ事やトラブルを未然に防ぐには、どのような方に有効なのでしょうか?下記にそのチェックリストを作りましたので、自分があてはまるか確認してみましょう。もし該当するようであれば一度専門家にご相談することをお勧めいたします。
- 相続人がいない
- 配偶者と別居中
- 内縁関係の配偶者に財産を残したい
- 事業を特定の者に継がせたい
- 相続人同士の仲が悪い
- 夫婦間に子供がいない
- 相続人以外に財産を残したい
- 特定の家族だけが介護を手伝っている
『子供がいないので全て配偶者に』『介護をしてくれた長女に多く渡したい』『前妻にこどもがいる』『内縁関係である』『息子の嫁にもわたしたい』『兄弟と仲が悪く疎遠』等様々なケースがありますがので、専門家に相談をし未然にトラブルを防止しする手段として、遺言書の作成は円満な相続を可能とさせます。
遺言書とエンディングノートの違い
エンディングノートという言葉をお聞きになっているかたも多いのではないでしょうか?でもエンディングノートと遺言書って同じでしょと勘違いされている方も多く見受けられます。ここではエンディングノートと遺言書の違いをご説明いたします。
【 エンディングノート 】とは
簡単にいうと、人生の終焉に向け、自分自身の歴史・財産・介護の希望・延命措置の希望・葬儀やお墓の希望・家族への想い等を記載しておくノートのことです。
最近の終活という意味で、エンディングノートを書かれる方が増えています、本屋さんや、インターネットからも簡単に入手することができます。終活のきっかけや、ご自分の死後の事も含めてこうしてほしい、ああしてほしいと自由に書くことができます。
ただし、遺言書とは決定的に違う部分がございますので、以下の比較表を参考にしてください。
遺言書 | エンディングノート | |
法律上の形式 | あり(形式不備の場合無効) | なし |
法的効力 | あり(法律で定められた事項のみ) | なし |
開封 | 勝手にはできない | 自由にできる |
遺産相続 | 出来る | 出来る |
介護・医療・延命治療の希望 | 生前のことなので書かない | 生前のことでも書ける |
家族への感謝のメッセージ | 書ける | 書ける |
書き直し | 出来る | 出来る |
※遺言書とエンディングノートの1番の違いは、法的効力があるかないかです。遺言書は法律に規定があるもので、当然法的効力がありますが、エンディングノートは法律上の規定があるわけではなく、法的効力もございません。
遺言書と同じような内容をエンディングノートに記載しても法的効力はありません。遺言書を作成する前段階としてエンディングノートを作成するのはいいと思いますが、エンディングノートのみでは、ご自身の希望を実現するこはできません。それぞれの役割を考慮して場合によってはエンディングノートと遺言書の二つ作成するのが良い場合もあります。
例えば、将来の介護、医療、延命治療の希望や葬儀やお墓についてはエンディングノートに記載し遺産相続に関して法的効力のある遺言書を作成すべきです。