相続放棄と過払い金
故人の残した過払い金も請求が可能です
相続放棄をする前に、必ず「過払い金」が無いかを確認してみましょう
「父がサラ金(消費者金融)・カード会社から多額の借金をしていた事がわかりました。借金を相続したくないので、相続放棄をしたいと思っているのですが」と言うご相談をよくお受けします。
親が借金をしていることが分かった場合、すぐに相続放棄の手続きをご検討される方が多いと思いますが、相続放棄をする前にひとつ確認していただきたいことがあります。
それこそが「過払い金」です。
故人がサラ金(消費者金融)・カード会社から生前に借り入れをしていた場合、高確率で利息制限法を超える違法金利での支払いを行っていた可能性があります。
故人の生前の貸し借りを、利息制限法による利率の引き直し計算を行い、借金を返しすぎていたこと(これを過払いといいます)が判明していた場合、本来、借金を返済する必要は無く、逆に過払い金を取り戻すことが出来るのです。ですが、相続放棄をした後では、「過払い金を取り戻す権利」も放棄することになってしまい、過払い金返還請求を行うことが出来なくなってしまいます。
- 取引期間がどれくらいありましたか?
- サラ金(消費者金融)・カード会社からの借り入れ金額はどのくらいありますか?
実は借金をしていた本人が亡くなった後でも、過払い金を請求できることはあまり知られていません。
なぜならサラ金(消費者金融)・カード会社にとって、相続人の相続放棄は、多額の過払い金を返済しなくてもよくなる絶好のチャンスなのです。亡くなった故人のためにも、そんな違法行為を許す訳にはいきませんし、見逃しもいたしません。
また、故人が生前に完済している場合でも、完済した日から10年経過していなければ、相続人からの請求が可能です。
上記説明ゆえに、故人にサラ金(消費者金融)・カード会社からの借り入れがあったと分かった時は、相続放棄を行う前に、財産(プラス)と負債(マイナス)が各々どれくらいあったのか、正確に調べることをお勧めします。
正確で確実な負債調査を行い、「本当に返すべき借金なのか」「過払い金は発生していないか」ということを確認することが何よりも重要です。
調査の結果、過払い金より負債の額が多い場合は、原則通り相続放棄をお勧めいたします。
債権放棄と消費者金融からの甘い罠
消費者金融機関から借り入れをしている方が死亡後に、相続人に対して消費者金融業者から債権放棄の書面を送ってくる場合があります。
相続人にとって、債権放棄の書面は、借金を免除してくれるという意味合いになりますので、これで安心して満足してしまうことが多いです。
実はこれが巧妙な罠なのです
消費者金融業者等から債権放棄の通知が送付されて来た場合、故人との取引について過払い金が発生している可能性が非常に高いと考えられます。なぜなら、通常は、消費者金融業者自らが債権を放棄し、借金の返済の請求ができなくなるような、業者にとって不利益な行為をとるとは思えませんし、またそのような事はいたしません。普通であれば借金の返済を相続人に請求するはずなのです。では、なぜこのような通知を送ってくるのでしょうか?
実は、相続人が「過払い金」の存在に気づく前に、相続人に「債権を放棄する」という通知を送付すれば、相続人が「借金がなくなったことに心理的に満足し、過払請求はしてこないだろう」というストーリーを考えているからだとと思います。
相続人が過払い金請求する時の手順と必要書類
①誰が相続するのか決めます(遺産分割協議)
相続人全員で協議をし、過払い金を誰が相続するのか決めます。全員で相続しても構いませんし、長男と次女、あるいは母だけ、など特定の人でも構いませんがが、特定の人が相続する場合は、その旨を明記した「遺産分割協議書」を作成する必要があります。
②過払い金がどれくらいあるのか算定をします
領収書・振り込みの記載がある通帳等、証拠があれば良いのですが、無い場合は相続人が消費者金融業者等に、取引履歴の開示を請求して調べることが必要になります。
消費者金融業者等が特定できない場合や、まだ他にも過払い金がありそうな場合は、CICやJICCなどの信用情報機関に問い合わせる方法もございます。取引の明細が判明したら、今までに支払った利息を、利息制限法の利率で計算しなおして「過払い金」を算定します。
実は、ここままでの作業は非常に手間がかかる上、業者によって算定法が違うなど非常に複雑で専門知識を要します、また時間や労力を使い負担がおおきくなります。ですので弁護士や司法書士などの専門家に相談されることをおすすめします。
さらには業者が取引履歴の開示請求に素直に応じない場合も多々ありますが、専門家に委任した場合、制度上強く要請でき、回収も依頼することができます。
③過払い金請求に必要な書類
相続人が過払い金を請求する場合には、大変多くの書類を提出する必要がでてきます。
- 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡時まで)
- 相続人全員の戸籍謄本
- 遺産分割協議書(印鑑証明書付)※法定相続人全員で相続する場合は不要です。
- 委任状(弁護士や司法書士などに委任する場合)
④注意点
- 相続放棄した相続人は、過払い金返還債権を有しません。よって遺産分割協議に関与する必要もありません。
- 一部の相続人だけが過払い金返還を希望し、他の共同相続人が過払い請求に乗り気でない場合は、希望している相続人の相続分だけを請求することとなります。
- 「過払い金返還請求権」の消滅時効10年の進行は、取引終了時からということで判例がでていますので、10年近く前の借金については、時効中断の手続を取った方が良い場合もあります。
- 過払い金の請求は、算定から回収まで、非 常に困難なことも多い為、裁判になることもあります。最初に「過払い金が発生している可能性があるか」司法書士等の専門家に相談することをお勧め致します。