【船橋市・相続手続き・Cさん】相続で係争中だが、預金だけ先に分割することはできるか?(一部分割)
船橋市にお住まいのCさんよりご相談です。
Cさんのお父様が亡くなり相続手続きに入ったのですが、お父様の遺言がが見つかり、その遺産調査に時間が掛かっている状況の中でのご相談でした。ですが、遺産の中には他から所有権を争う訴訟をおこされている物もありました。そんな中で相続人から、預金だけでも早く分けてくれないかと言われているそうです。現時点で預金だけを分割する事は可能なのかとのご相談でした。
「一部分割」
遺産分割は、遺産全部について分割するのが通常ですが、現実的には全部を一度に分割するのが困難な場合があります。このような場合は、遺産のうち分けやすいものから分割するという段階的な分割方法をとった方が良い場合がありあす。
今回のご相談の場合も、遺産全部を一度に分割することは困難で、まず預金だけ分けて、残りの遺産を分割する際に相続人に公平となるよう調整するのが適切だと思います。
このような段階的に分割する方法は通説判例により認められており、協議分割や調停分割の場合だけでなく、審判分割の場合でも例外的に認められています。また、分割後に新たな遺産が見つかった場合も結果として今回のご相談内容と同じこととなります。すでに行われた協議を無効として分割し直すのは、相続人に無駄な努力や労力を強いる事になり、原則として既になされた遺産分割協議は有効と考えらています。
「一部分割が許される条件」
では、どのような場合に一部分割が許されるかについてですが、実は規定はありません。
遺産の調査に時間を要する場合
遺産の一部に訴訟が係属して確定までに長期間かかる場合
遺産の一部の分割が禁止されている場合
相続税の支払いの為現金を早く取得したい相続人がいる場合
上記のように、一部分割すべき合理的理由がなければなりません。また、遺産分割の基準に照らして遺産全体の総合的配分に食い違いが生じないで、残余財産の分配によって相続人の公平をはかる事ができる場合に許されています。
ですので、一部分割は容易には許されているわけではありません。
「残余財産に及ぼす影響」
一部分割が残余財産に及ぼす影響については、すでに分割した遺産も分割時にあるものとして遺産全体の総額を評価し、具体的相続分を算定します。そこから一部分割により各自が取得した遺産評価額を控除したものを残余財産の分割による取得額として、一部分割の際の不公平不均衡を是正するのが相当だと思われます。しかし、一部分割の不均衡を考慮しないで残余財産を独立に分割することも認められる場合があります。したがって、このような暫定的分割をするときは、分割の協議書や調停調書に一部分割であること、その一部分割が残余財産分割の際に及ぼす影響の有無、内容について明確にしておく事が大切です。