【我孫子市・相続手続き・Kさん】相続人不存在の場合の相続財産はどうなる?
我孫子市にお住まいのKさんよりのご相談です。
Kさんが知人に飲食店開業の為の資金を貸していましたが、その知人が亡くなってしまいました。その知人は一人で飲食店を営なんでおり、身寄りのない人でした。また、その知人が亡くなったことによって他方でも借金をしていることも分かりました。ところが、その知人は親から受け継いだ不動産を多数所有していたことも判明しました。このような場合私は知人へ貸した資金の回収をしたいのですが、どうすればよいですかというご相談です。
「相続人不存在」
今回のご相談のように、被相続人が亡くなり相続が開始しているにも関わらず、相続人がいるかいないかはっきりしない場合を法律上「相続人不存在」と呼んでいます。相続人となり得るのは、被相続人の配偶者・子・直系卑属・直系尊属・兄弟姉妹・甥・姪ですが、Kさんがその存在を知らないだけで、実際には相続人となる者がいるかもしれません。そこで、Kさんとしては、まず被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本・除籍謄本・原戸籍等を取り寄せて、これらの相続人がいるのかいないのかを確認します。もし相続人がいるならば、その人が相続放棄をしない限り、その人に対して貸金返還請求すればよいことになります。一方で相続人と成る人がいないか、あるいはいてもその全員が相続放棄している場合には「相続人不存在」になります。
「相続財産管理制度」
上記のように戸籍上推定相続人とされる者がいないか、全員が相続放棄したときは「相続人不存在」となり、このような状況に対応するため法律は相続財産管理の制度を設けています。この制度はおおまかに言うと、相続人不存在の場合に、相続財産を相続財産法人という一種特別の財産法人に擬制し、利害関係人または検察官の請求により家庭裁判所が選任した相続財産管理人が、相続財産の中から債権者に対する債務の弁済を行った上で、場合によっては特別縁故者の請求による財産分与を行い、残余を国庫に帰属させるというものです。相続財産管理人は、通常は弁護士が選任されます。相続財産管理人となった者は、相続財産の財産目録を調整して相続財産を管理することになります。
相続財産管理人の選任の公告があった後、2か月以内に相続人が現れなかった場合、管理人は遅滞なく一切の相続債権者および受遺者に対して一定の期間(2ヵ月以上)その期間内に請求の申出をするよう公告し、知れた債権者らには個別に通知し、清算手続きに着手します。そして、管理人は公告期間経過後、期間内に申し出た債権者に対してまず弁済し、次に受遺者に対して弁済していきます。ただし、相続財産のうち資産よりも負債が多い場合は、債権額の割合に応じた配当弁済となり、受遺者には配当されません。この弁済の原資は管理人が財産を競売もしくは家庭裁判所の許可を得て任意に売却することにより換価して作ります。
今回のご相談の場合、被相続人の債権者は利害関係人に当たりますから、相続財産管理人の選任請求ができます。その上で、請求申出の公告期間内に債権の届出をして弁済を受けることになります。なお、相続債権者らに対する請求申出期間が満了すると、家庭裁判所は6ヶ月以上の期間を定めて相続人捜索の公告を行い、その期間内に相続人が現れなければ「相続人不存在」が確定します。こうなってしまうと、たとえ相続人や相続債権者がいたとしても権利行使ができなくなりますので注意が必要です。その後3ヵ月以内に請求があれば特別縁故者への相続財産分与の問題となり、最終的に残った相続財産は国庫に帰属することになります。なお、手続き中に相続人が存在することが判明した場合には、相続財産法人は最初から存在しなかったものとみなされますが、相続財産管理人がそれまでした行為は、そのまま効力を持ちます。
被相続人死亡
↓
(戸籍上推定相続人なし又は相続放棄)
↓
利害関係人又は検察官の請求
↓
家庭裁判所―相続財産管理人の選任・公告
↓ 2ヵ月
相続債権者・受遺者に対する請求申出の公告
↓ 2ヶ月以上
相続人捜索の公告
↓ 6ヶ月以上(相続財産の清算)
相続財産の確定
↓ 3ヵ月以内
特別縁故者の請求による財産分与
↓
残余財産の国庫帰属