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【千葉市若葉区・相続手続き・Aさん】愛人の経営するスナックの明け渡し

千葉市にお住まいのAさんよりご相談です。

Aさんのお父様が亡くなり、相続人はA(長男)さん1人でした。Aさんのお父様はなかなかの発展家で生前に複数の女性とのお付き合いがあったそうです。その中に駅前でスナックを経営させている女性がおりました。そのスナックの土地建物は父の名義だと考えられ、Aさんからその女性に明け渡しを求めたところ、その女性曰く、Aさんのお父様にもらったもので、自分のものだと主張しています。この場合、その女性から明け渡しをしてもらうことはできるのでしょうか?というご相談です。

「スナックの土地と建物の名義の確認」

まず、スナックの土地・建物の登記事項証明書もしくは不動産全部事項証明書を申請し、所有名義を確認することが必要です。スナックの土地・建物の所有名義がお父様のままなのか、それとも、その女性に移っているのかで、Aさんからの明け渡しの請求が可能かどうかも大きく変わります。

「土地と建物の所有名義人は誰か」

①スナックの土地と建物の所有名義が女性に移転していた場合
土地と建物の所有名義がお父様からその女性に移転していた場合には、すでに、お父様の生前にこの土地と建物が愛人に贈与されていたと考えられますので、基本的には明け渡しを求めることはできないことになるでしょう。ただ、お父様が亡くなる直前に、すでに意識がない状態の時点で所有権移転登記がなされたなど、お父様の意思に基づかない登記なのではないかとの疑いが少なからず考えられる場合には、当該土地建物の登記をお父様に戻し、土地と建物から立ち退いてほしいという内容の請求が、場合によっては可能となるものと考えられます。
しかし、その場合でも、女性がお父様から何らかの使用権限(賃貸借、使用貸借等)を与えられている場合がありますので、注意が必要です。この場合には、Aさんはその女性に使用権限を与えたお父様の相続人であり、その地位を承継するので、女性との間の賃借関係を引き継いでいることになります。賃借権であれば、明け渡しの請求には正当事由の問題等があり、使用賃借であっても、スナックがその女性の唯一の収入源である等の事情がある場合には、解除して明け渡しを求めるのは、かなり困難を要する場合も考えられるでしょう。

②スナックの土地と建物の所有名義がお父様であった場合
女性の主張によれば、当該土地、建物はお父様の生前に贈与を受け、登記名義はお父様であっても、すでに土地、建物はその女性の所有であるということになり、明け渡しの請求は基本的にできないようにも思えます。以下、項目を分けて検討します。

(1)女性の主張が女性とお父様との単なる口約束にすぎなかった場合
口約束であっても、贈与契約は有効に成立します。ただ、この場合は、当該女性の主張を裏付ける物的な証拠がありません。とすると、Aさんとしては、お父様の相続人として、女性に当該土地と建物の明け渡しを請求していくことが一応は可能なのではないかと思われます。しかし、示談がまとまらずに訴訟となった場合の主張や立証の状況如何によっては、お父様とその女性との本件土地、建物の贈与の約束が認められ、Aさんの請求が退けられる可能性もあります。また、このように書面に残らない贈与は、民法上履行が終わらない部分については、いつでも当事者双方から取り消すことができるとされていますので、お父様の地位を受け継いだ息子であるAさんから取消しの意思表示をすることも可能です。しかし、スナックはお父様の亡くなる前から、すでにこの女性が占有していることから、履行が終わっていると認定され、取消はできなくなる場合もあるでしょう。この場合でも女性側は所有権が認められない場合には、使用権(賃貸借、使用賃借等)を主張してくるものと考えられます。

(2)お父様から贈与の意思を表す文書や贈与契約書が作成されていた場合
贈与意思を表示する文書や贈与契約書にお父様の自署による署名がなされ、実印が押印されている場合には、お父様の女性に対する当該土地、建物の贈与の意思を表す物的な証拠があることから、基本的には明け渡しを請求していくことは難しいのではないかと考えられます。この場合には、逆に、女性側からお父様の相続人であるAさんに対して、本件土地、建物の所有権の移転登記の請求をしてくることも考えられます。

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