【千葉市中央区・相続手続き・Uさん】土地・建物の売買契約の途中で買主がした場合はどうなるのか?
千葉市にお住まいのUさんよりご相談です。
Uさんは、定年退職で引退しその後の人生として自宅を売却し田舎に引っ越そうと思っていました。そこで不動産屋に依頼をして自宅の売却先を探していたところ買主が見つかり、その買主との間で売買契約書を取り交わし手付金を受け取りました。ところがその直後に、買主が交通事故によって亡くなってしまいました。
・この場合、売買契約はどうなってしまうのか?
・支払期限に代金を払ってもらえなかった場合、売買契約は解除できるのか?
・買主の相続人が買主の妻と息子2人であった場合において、長男が父親を受け継いで買主になると主張しているとき、この長男が自動的に買主になるのでしょうか?買主の妻と次男には何も言えないのでしょうか?
とのご相談内容でした。下記で詳しく解説していきます。
「売買契約の効力はどうなるのか」
Uさんと買主の間では、すでに自宅の土地・建物についての売買契約書を取り交わし、手付金を受け取っているのですから、Uさんの自宅の土地と建物の売買契約は有効に成立しているものと考えられます。だとすると、買主の相続人が、買主としての権利義務を承継することになります。
「売買契約の解除はどのように行うのか」
売買契約書上明記された約定の残代金支払期日を経過したという前提で回答いたします。
この場合には、契約違反を理由に売買契約を解除することが考えられます。
方法としては、契約書に特に定めがなければ、期間を定めて相続人全員に支払を催告し、さらに契約の解除通知も行わなければならないものと考えられます。この場合に注意すべきは、誰が相続人であるかは、外観からははっきりしない場合が多く、相続人の申告のみを信用することなく、専門家である士業に依頼するなどして、調査して対処することをお勧め致します。
「買主としての地位は、相続人の協議のみで勝手に相続人の1人が承継すると定められるのか」
1 買主としての地位とは(買主の権利と義務)
遺産は、相続が開始したときは、相続人全員の共有になります。したがって不動産の売買契約に基づく買主としての地位、すなわち権利や義務も相続人に共同して承継されます。この場合、買主としての権利とは、買った土地・建物の移転登記請求権や、引渡請求権、契約の解除請求権などです。買主の義務としては言うまでもなく、残代金支払債務です。
2 長男のみが土地・建物の所有権を取得すると定めることは可能か
さて、このうち権利については遺産分割の対象となりますので、各相続人の間で協議をして、長男のみが当該土地、建物の所有権を取得すること、すなわち登記を移転してもらい、引渡を受けることを定めることは可能です。
3 長男のみが代金支払債務を負うと定めることは可能か
代金支払の債務が可分債務であることを前提とするならば、相続によって各相続人に相続分に応じて分割された分が継承されることになりますし、代金支払債務が不可分債務であることを前提とするならば、各相続人らは不可分にUさんに対して本件売買契約に基づく代金支払債務を負う事になります。とすると、買主の長男が、当然には「自分だけが代金を支払います」と主張することはできません。すなわち、代金支払の債務については、相続人の協議のみで長男のみが引き受けて、他の相続人は債務を免れると定めることはできないのです。これを許せば、例えば被相続人に多額の借金があった場合に、資力のない相続人に借金を全部承継させて、その他の相続人積極財産(例えば不動産)を承継することも可能になり、債権者にとって大変な不利益となるのです。結局、売主であるUさんと、他の相続人と長男との協議で、Uさんが代金支払の債務を長男一人が引き受けることにしても良いと、同意や承諾をした場合に、初めて他の相続人が支払債務を免れることになります。