【船橋市・相続手続き・Kさん】訴訟中に父が死亡、裁判はどうなる?
船橋市にお住まいのKさんより、相続手続きと係争案件のご相談です。
Kさんのお父様は生前に、ご友人に1,000万円を貸していましたが、返済をいつまでたってもしてもらえないので、弁護士を立てて返還請求の裁判を起こしたそうです。しかし、判決が下りる前にお亡くなり(突然死)になってしまったそうです。この裁判はどうなりますかとのご相談です。
「係争物が被相続人の一身専属権である場合」
裁判の進行中に訴訟当事者の一方が死んでしまった場合、裁判で争われていた権利義務関係(係争物)が死亡した訴訟当事者にとって一身専属的なものであるならば、それは相続の対象とはならず、権利義務関係自体が消滅してしまいますから、裁判で争うべきものがそもそもなくなってしまうことになり、裁判はそのまま終了することになります(離婚訴訟等)
「係争物が被相続人の一身専属的でない場合」
一方で、係争物が死亡した当事者にとって一身専属的な権利でない場合はもちろん相続の対象となり、この場合、被相続人の裁判上の地位もそのままの状態で引き継がれることになります(これを当然承継といいます)。
したがって、仮に被相続人がこれまで行ってきた訴訟において旗色が悪く、敗色が濃厚であったとしても同じ係争物について新たに別の裁判を起こして争う事は許されないとされています。
ところで、裁判係属中に口頭弁論が終結するまでの間に訴訟当事者が死亡した場合には、原則として訴訟手続きはその進行を中断し、相続人が訴訟を受継することにより進行を再開します。訴訟手続きが中断している間は、裁判所も相手方当事者も何ら訴訟行為を行う事はできません。これは、中断中に裁判所や相手方当事者の訴訟行為を認めてしまうと不公平な裁判となり、当事者双方に平等な弁明の機会を与えようという裁判の建前に反することになるからです。もっとも、被相続人が生前において弁護士を選任にしており、その弁護士が訴訟代理人として訴訟を進めていた場合には、前述したような不都合はありませんので訴訟手続きは中断しません。また、死亡したのが訴訟当事者ではなく、選任を受けて訴訟代理人として訴訟を進めていた弁護士である場合は、当事者本人が訴訟活動を行う事ができますので、やはり訴訟手続きは中断しません。
今回のご相談の場合は、係争物が1,000万円の貸金返還請求権という金銭債権で一身専属権でないことは明らかであり、訴訟は相続人であるKさん(方)に引き継がれますが、弁護士が選任されていますので訴訟手続きは中断しないことになります。
「訴訟手続きの受継方法」
今回のご相談の場合と関連して、訴訟手続中に当事者の一方が死亡した場合の訴訟の受継方法についてみておきましょう。この場合は、相続人である当事者もしくは相手方が受継申立てを行い、裁判所が理由があると認めると申立てがあったことを他の当事者に通知した上で期日を指定して、新当事者および相手方当事者を呼び出します。これにより中断していた訴訟手続きは進行する事になります。なお、双方の当事者が共に受継申立をしないでいると、裁判所が職権で続行命令を出し、これにより手続きが進行する事もあります。