【千葉市・相続手続き・Iさん】香典や弔慰金は葬儀費用に充てて良いのか?
千葉市にお住まいのIさんより、相続手続きに関するご相談です。
Iさんのお母様がお亡くなりになり、喪主である長男さん葬儀を執り行いました。ですが、葬儀費用は金銭に余裕のあったIさんが負担をしたそうです。結構な弔問客があり、香典・弔慰金も相当な額となりました、Iさんは葬儀費用を捻出しているので、その香典・弔慰金を葬儀費用に充てようと考えていたそうなのですが、長男さんに「香典・弔慰金は相続財産に含まれているので、兄弟全員で分けるべき」と言ってきました。香典や弔慰金の取扱いはいかにすれば良いですか?とのご相談です。
「葬儀費用は誰が負担するのか」
家制度のなくなった現在では、遺族の中で誰が喪主として葬儀を執り行うか、誰が葬儀費用を支出すべきかということについて法律上の規定はありません。もっとも実際上喪主となるのは配偶者か長男が多いのですが、その場合、喪主となった者に葬儀費用のすべてを負担させることは、財産相続に関して法定相続分を定めてこれに従った均等な相続分を認めていることと比べて公平を欠きます。
「香典・弔慰金の性質」
弔問客が香典・弔慰金を贈る趣旨は、死者を供養しあるいは遺族の悲しみのを慰めるという意味もありますが、主たる目的は、遺族が支出を余儀なくされる葬儀費用等の支出の負担を軽くするために、遺族に対し相互扶助の精神に基づき金銭その他の財物を贈与するという点にあります。このような性質から考えると、香典・弔慰金は相続財産に含まれないことになります。そこで、葬儀費用については、葬儀が死者の社会的・経済的地位から見て分相応な物である限り、第一次的には香典・弔慰金から充当することになります。そして、葬儀費用が香典・弔慰金では足りない場合、葬儀費用は相続財産に関する費用と考えられますので、まず相続財産の中からこれを支払い、それでも不足する場合には共同相続人が各自の相続分に応じて負担することになると考えられます。
一方で身分不相応な葬儀が行われた場合、そのような葬儀は喪主の裁量で執り行われたといえますので、不相応な超過部分については喪主が負担すべきこととなります。
以上から考えると今回のご相談の場合、葬儀費用を現実に支出したIさんは香典や弔慰金の額が身分相応な葬儀費用の額を超えない限り、全額香典・弔慰金から充当することができます。このことは、香典や弔慰金を多く出したのが誰であるかといった事は関わりありません。なお、執り行われた葬儀が身分不相応なものであった場合でも、Iさんは喪主ではないのですから、これを負担する必要はありません。したがって、超過分については香典や弔慰金から充当することはできませんが、身分相応な葬儀を執り行ったお兄様に対して支払いを求めることはできることになります。
「香典や弔慰金の額が葬儀費用を超過する場合」
なお、今回のご相談と関連して、香典や弔慰金の額が葬儀費用を超過する場合について考えてみます。香典や弔慰金の合計額が身分相応な葬儀費用の額を超えて残余が出た場合、香典や弔慰金が葬儀費用に充てるためのものであることから、一般的には喪主に贈られたものと解されますので、喪主が裁量によって決めることになるでしょう。ただ、香典というのが名目に過ぎず、例えば未亡人や幼児の今後の生活費を援助するため贈ったなど贈与者の意思が明白である場合には、それに従って配分することが必要になると考えられます。また、弔慰金の名目で贈られた金額が死亡時の賃金や勤続年数を基準に定められた金額である場合には、実質的には死亡退職金であると考えられます。したがって、この場合の受取人は会社の内規によって定められた該当者ということになりますので、該当者が受け取る事になり葬儀費用には充当できないことになります。