【千葉市中央区・遺言書・Aさん】遺留分を放棄したい、そのための手続きは?
千葉市にお住まいのAさんよりご相談です。
Aさんの奥様は既にお亡くなりになっており、家業を継いだ長男さんに全財産を相続させたいと思っていたそうなのですが、次男・三男さんは既にある程度の財産を与えていたため、これ以上遺産はいらいと言っているそうです。しかしAさん自身は、ご自分が亡くなった後、次男や三男が気が変わって長男へ相続させた遺産に対し、兄弟間で揉める可能性もあると思っています。こんな場合に何か良い方法はないですかとのご相談です。
「生前の相続放棄」
日本の民法では、被相続人の生前に相続放棄をすることを認めていません。すなわち、相続放棄は被相続人が死亡し、相続が開始した後でなければできません。したがって、長男さん以外の子供たちに、「遺産は一切要求しません、相続を放棄します」という念書を書かせても無効です。そこで一つの方法としては、まず長男さんに全財産を相続させる旨の遺言をすることが考えられます。しかし、長男さん以外の子供たちには、遺言をもっても奪う事の出来ない相続分(遺留分)が法律で保障されています。したがって、長男さん以外の子供たちにそれぞれ既に与えた財産が遺留分に達していれば別ですが、そうでなければ長男さんは、長男さん以外の兄弟達から遺留分減殺請求権の行使を受ける危険性があります。ただ、民法は被相続人の生前に家庭裁判所の許可を得て遺留分の放棄をすることを認めています。
したがって、今回のご相談の場合は、長男さんに全財産を相続させる旨の遺言ををすると共に他の子供たちについては、気が変わらないうちに遺留分を放棄してもらい、家庭裁判所で遺留分放棄の許可を得ておけば良いわけです。
「遺留分放棄の手続き」
遺留分放棄の許可の審判は、第1順位の推定相続人、今回のご相談の場合でいえば、長男さん以外の子供たちが家庭裁判所に申し立てることによってなされます。
ただし、この許可が必要なのは、当事者の自由に委ねると、被相続人等が遺留分を持つ相続人に圧力を加えて遺留分を放棄させ、不当な結果になる恐れがあることから、家庭裁判所のチェックを経る事によってそれを防止することにあるので、家庭裁判所は、遺留分放棄の申立てが制度の意義を理解した上での真意に基づくものか、放棄の理由の合理性、必要性、放棄と引き換えに何らかの代償があるのかなどについて審査することになります。したがって、申立てさえすれば当然に許可がでるわけではないのです。
要するに、長男さん以外の兄弟たちに遺留分を放棄してもらうためには、話し合いによるコンセンサスと相当の代償が必要なのです。