【我孫子市・相続手続き・Oさん】遺産の評価をする時期とは
我孫子市にお住まいのOさんよりのご質問です。
亡くなった父の財産の中で、不動産やゴルフ会員権があるのですが、父が亡くなってから実は数年たっています。ちゃんと遺産分割をしようと思うのですが、その遺産の価値が現在ではすごく下がっています。こういった場合遺産分割をするにあたって、その価値の下がった遺産はどの時点の評価をすれば良いのでしょうかというご質問です。
「遺産の客観的評価」
遺産分割は遺産中の個々の財産の分割を集積したものではなく、遺産全体(場合によっては一部)を総合的観点にたって価値的に偏りがないように相続人で分配することですから、遺産全部についてその価値がわからなければ相続分に応じて公平に遺産を分割する事はできませんし、そのことから紛糾を生じて遺産分割をするうえで妨げとなる恐れがあります。
そこで、遺産分割協議をスムーズに進めるために、あるいは調停や審判をするうえでも不動産など客観的価値を評価できる遺産については、その価値を評価する必要があります。そして、遺産の客観的価値については、実際の取引価額つまり時価を基準とするものとされています。時価については、相続人間で合意できればどのような方法でも良いのですが、例えば不動産については近隣の実際の取引価額や、固定資産税や相続税の課税基準価額あるいは地価公示法による公示価格を参考に、ゴルフ会員権や株式、自動車等については相続税法上の遺産評価方法が参考になると思われます。
これでも納得のいかない場合については、費用は掛かるものの、例えば不動産については不動産鑑定士に、ゴルフ会員権等については相場がありますので、市場における取引価額を参考にして専門家のそれぞれ鑑定を頼むと、よりはっきりします。この鑑定は、調停や審判に持ち込まれた時も他の方法と並んで時価を知るために活用されています。
「いつの時点で時価を評価すべきか」
このように、遺産の客観的価値を知る為には時価で評価すべきであるとしても、遺産の中には、今回のご質問の場合のように不動産やゴルフ会員権のような価額の変動が激しい財産が含まれる場合があります。その時相続の開始から現実に遺産を分割しようということになるまで相当な期間が経ち、その間に評価が大きく変動しているような場合は、いつの時点の時価を基準とするかによっては、遺産分割によって得た財産の価値が相続人ごとに大きく異なってしまう事が考えられ、不公平となるばかりか、それを前提にすると遺産分割が成立しなくなる恐れもあります。したがって、相続人間の公平を保ち、不平がでないようにして遺産分割をスムーズに進めるため、現実に分割を実現する時点で時価評価する必要がありますし、裁判所の実務でもほぼそのような取扱いがなされています。