【千葉市緑区・相続手続き・Uさん】遺産分割協議前に勝手に処分した遺産は取り戻せるか?
千葉市にお住まいのUさんよりのご相談です。
Uさんのお父様が亡くなり、いざ相続手続きを始めるためお父様の遺産を調査したところ、長兄が遺産分割をする前に無断で不動産を処分し移転登記までしており、お父様の所有していた骨董品も処分しており、預金も勝手におろして使っていた事が判明しました。
相続人である、お母様とUさんの持ち分に対する遺産は取り戻せますかという、ご相談でした。
被相続人が死亡してから遺産分割が完了するまでの間、遺産は共同相続人全員の共有に属すると考えられています。特に不動産や動産は共同相続人の共有に属しますので、1人の相続人が勝手に処分することは許されません。預金などの債権は、相続開始と同時に共同相続人の相続分に応じて当然に分割されるとされていますが、実際の銀行実務では預金者が亡くなることが判ると、相続人全員の同意がないと預金の払い戻しに応じません。
「不動産」
不動産は共同相続人の共有の属し、1人の相続人が勝手に譲渡することはできません。
今回のご相談の場合、長男さんは自分の法定相続分の1/4以外の3/4の持ち分については、全くの無権利者ですから、たとえ譲渡を受けた第三者が登記を信頼して移転登記を受けたとしても保護はされません。したがって、他の相続人は3/4の持ち分については登記の抹消を請求する事ができます。
「動産」
動産も共同相続人の共有に属し、1人の相続人が勝手に処分することは許されません。しかし、動産は不動産と違って、たとえ無権利者からの譲渡であっても、動産を譲り受けた者が所有権を善意無過失に信じて譲渡を受ければ所有権を取得します。これを「善意取得」あるいは「即時取得」の制度といいます。今回のご相談にもあった骨董品を譲り受けた第三者が、長男さんの所有物であると過失なく信じた時は、その者が所有権を取得し、その返還を求めることが出来なくなります。
「預金」
今回のご相談での預金に関して、長男さんはお父様が亡くなった事を知らせずに銀行から預金の払い戻しを受けたものと思われます。銀行が預金者の死亡を知らずに預金通帳と届出印の所持人に払い戻しをしたことについて過失がないときは「債権の準占有者に対する弁済」として、払い戻しが有効となる場合があります。この場合は、長男さんに対し払い戻しを受けた金額について、相続分相当額の返還を請求することになります。