【千葉市稲毛区・相続手続き・Mさん】相続財産(遺産)に収益が発生している場合の相続手続き事例
千葉市にお住まいのMさんより収益物件(不動産)がある為、相続人間(兄弟)で遺産分割が完了していないというご相談でした。
被相続人:お父様
相続人:兄弟4人(長男・長女・次男・三男)
お話を伺っていくと、お父様が亡くなり、相続人である兄弟4人で遺産分割の話し合いをずっとしてきたそうなのですが、2年たった現在においても遺産分割協議が成立していないとの事です。その間も遺産である賃貸マンションの家賃収益も高額になり、また有価証券の配当もその間に発生しました。今後、どうのように父の遺産の処理(相続手続き)を完了させれば良いですか。とのお悩みでした。
「遺産からの収益」
相続が開始してから遺産が現実に分割される間には、ある程度時間を必要とするのが通常ですが、今回の事例のように相続開始後2年も経過しますと、その間に発生するマンションの家賃や預金の利息も相当額になり、また株式(有価証券)については利益配当などがなされることがあります。これらの遺産からの収益は物の使用の対価として生じたもので、法定果実と言われるもので遺産そのものではありません。
「分割の対象となるか」
この遺産からの果実(マンション賃貸収益・株式配当金)を遺産分割の対象とできるかどうかについては、最近の傾向としては、このような遺産からの果実を全く除いて遺産分割をすることは、遺産分割が終わった後に、果実だけについて再び分割の手続きをしなければならなくなり非常に煩雑であり、当事者全員の同意があれば家賃などの果実も遺産分割の際に一挙にその帰属を決めることができ、分割の対象となるとしています。
「最高裁の判断」
この点について、最高裁(平成17年9月8日判決)は、次のように最近の傾向とは違う判断をしました。
『遺産は、相続人が数人あるときは、相続開始から遺産分割までの間、共同相続人の共有に属するものであるから、この間に遺産である賃貸不動産を使用管理した結果生ずる金銭債権たる賃料債権は、遺産とは別個の財産というべきであって、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得するものと解するのが相当である。遺産分割は相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずるものであるが、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得した上記賃料債権の帰属は、後にされた遺産分割の影響を受けないものというべきである』
「遡及効との関係」
ですので、今回のご相談に当てはめると、例えば長男が賃貸マンションを遺産分割により取得した場合、そのマンションは相続開始の時から長兄の所有であったことになりますが、上記の最高裁の判示によると、相続開始から遺産分割までの間のマンション家賃を他の相続人である3名(長女・次男・三男)が、その相続分に応じて分割し、家賃を単独で取得することを、何ら妨げるものでもないことになります。